■『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること 』河合雅司(講談社現代新書)

日本が少子高齢社会であることはもはや常識だが、その怖さを具体的に意識できている人がどれだけいるだろう。
そんな漠然とした不安に明確な輪郭を与える書。主に参照されているのが、国立社会保障・人口問題研究所の〈日本の将来推計人口〉データ。たとえば,2020年には〈女性の過半数が50歳以上となり、出産可能な女性数が大きく減り始める〉。その翌年には〈団塊ジュニア世代が50代に突入し、介護離職が増え始める〉と続く。
第2部は,人口減少への処方箋の提案10項目。

本欄では,本書で提案された処方箋10項目のうち「7.国費学生制度で人材育成」「10.第3子以降に1000万円寄付」よりも即効性のある提案をしたい。
一部のヨーロッパ諸国のように,高等教育を無償化するすることである。
すでに中等教育(高等学校段階まで)の無償化は実現しつつある。
無償化に代えて,既存の日本学生支援機構による奨学金(実態は教育ローン)をすべて給付型に転換してもよい。
従前の奨学金を対象に徳政令をだして債務免除を実行する。
強引な取り立てを強行して少なからぬ元学生や保護者を破産に追い込んだ日本学生支援機構は解体する。
日本育英会の時代にはそんなことはなかった。
博士課程を終えて1000万円近いローンを抱えた人がいる。また大卒者の3割近くが数百万円のローンを抱えている。
これでは結婚できないし,婚姻件数の減少が少子化の最大の原因なのである。

  • 出版社: 講談社
  • 価格: 760円+税
  • ISBN-13: 978-4062884310
  • 発売日: 2017/6/14